ストーカーの正体はなんと○○!?意外過ぎる被害の盲点

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市内で一人暮らしをするOLのA子さん(仮名)から相談の電話が入った。

「ストーカーに付きまとわれてるんです。もしかしたら家にも入られてるかもしれません」

A子さんのケースでは無言電話や怪文書のような嫌がらせが無いかわりに、A子さんの下着や洋服、果ては使用済みの生理用品までもが無くなる被害が続いているとのこと。A子さんのマンションはオートロック付の7階。室内はおろかベランダでさえそう簡単に侵入できるところでは無い。普通に考えれば、外部からの侵入者とは考えづらい。

A子さんの自宅マンション。正面玄関はオートロックになっている。正面玄関はしっかりとしたオートロック

七階のA子さん自宅のベランダ。人が登れる高さではない。7階のA子さん自宅のベランダは人がよじ登るには不可能な高さ


これは顔見知りの犯行だ、と直感した私は、A子さんに職場か友人関係で心当たりは無いかと尋ねた。しかし・・・、

 「職場の人にも男友達にも今の住所は教えてません。それに、何度鍵を変えても効果が無くて、引っ越しても付いてくるんです」

聞けばA子さん、このストーカー被害にもう5年も苦しめられているとのこと。その間に2度の引っ越しを行うも、引っ越し先でまったく同じ被害が始まるという。信頼できる同性の友人と家族以外には住所を教えていないにも関わらずだ。

あまりの不気味さに現在A子さんは、県をまたいだ実家から通勤しているとのこと。仕事を辞めて実家に考えることも考えたが、今の仕事が好きだからできれば辞めたくないと言うA子さんのために、調査を開始した。

まずは犯人の侵入経路を特定せねばと、A子さんの自宅マンションに監視カメラを設置。事件解決の為ならと進んで囮を買って出てくれたA子さんに自宅に戻って貰い、A子さん自宅に出入りする人間をチェックした。

A子さん自宅玄関に設置したカメラの映像(イメージ)A子さん自宅玄関前の画像(イメージ)


しかしA子さんの留守中に、A子さんの自宅内に入るような人間を確認出来ず。念の為在宅中にチェックをしても、A子さんを心配して訪ねて来る女友達か家族ぐらいの出入りしかない。もしやカメラに気づかれたのか。不安が過ぎる中、A子さんから連絡が入った。

 「また盗られました!」

悲痛な声で叫ぶA子さん。今度はA子さんが寝巻にしているトレーナーが無くなったというのだ。当日の朝にスーツに着替えた時は間違いなく畳んで片付けて、夜にお風呂に入る前に見たら、無くなっていた。つまりその間にストーカーが入ったということだ。

すぐさま当日の映像を確認し、ストーカーの特定に取り掛かる。ベランダと玄関に仕掛けた計3台のカメラの映像を隈なくチェックし、A子さんが帰宅するまでの日中に部屋に近づく人間をピックアップしたが、いない。一人だけ映っていた中年男性はマンションの管理人であると確認出来た。もちろん部屋に入るようなことはない。

いないのだ。A子さんの留守中に部屋に入る人間はおろか、近づくものさえいない。ベランダも同様だ。部屋に入るには玄関かベランダを通らねばならず、その2か所に死角なくカメラを設置した。確実に侵入者がいるはずなのに、その姿がどこにも映っていない。まったくもって不可解な話である。

私が頭を捻る隣で、映像を確認していた調査員の一人が声を上げた。

「すいません。勘違いかも知れないんですけど・・・」

そう前置きしてから、調査員は映像の一点を指さした。そこにはA子さんを心配して訪ねてきたA子さんの弟と、彼を見送るA子さん本人の姿だった。

「弟さんのカバン、なんか膨らんでませんか?」

言われて見てみれば確かに、A子さんの部屋に入る前と比べて帰る時は鞄が少し膨らんでいるように見えた。

恐ろしい考えが私の頭を過った。私の考えが正しければ、どんなにA子さんが警戒していようが我々が調査を行おうが、いままで犯人の影も形も見えなかった説明がつく。だが、そんなことがあり得るのだろうか。

念の為A子さんに連絡し、その日弟がなにか持ち帰らなかったか確認したが、なにも持たせていないという。また弟が一人になる時間があったかと確認すると、A子さんがトイレで用を足していた数分の間があった。

私自身、その時点でも半信半疑だった。だが少しでも可能性がある以上、最悪の事態を想定して動かなければならない。絶対にあり得ないということはあり得ないのだ。そう自分に言い聞かせ、意を決して私はA子さんに私の考えを告げた。

「弟さんがストーカーの可能性があります。弟さんがいないときに、実家の彼の部屋を調べてみた方がいい」

A子さんの反応は激しかった。「弟がそんなことをするはずがない!」「家族を侮辱するなんてひどい!」と強く私を非難した。当然の反応だ。私はA子さんに非礼を詫び、憤る彼女を宥めながら、それでも重ねて彼女に願い出た。弟の部屋を調べさせてほしい。私の間違いであることを確認させて欲しいと。

時間にすれば数十分でしかなかったが、私は彼女を説得し続けた。その甲斐あって、遂にはA子さんにもしぶしぶながら条件付きで了承してもらえた。

「私が実家に行って、一人で確認してきます」

それがA子さんの出した条件だった。もし私の考えが正しければ多少の危険も伴う上に、本人が見るには酷なものもあるだろう。せめてご両親に付き添ってもらうよう勧めはしたが、「大事な弟のことなので疑うようなことを両親に言いたくないし、なにより事実だったら大事にしたくない」と頑なだった。


後日、A子さんは家族に内緒で有休を取り、弟が仕事でいない日中に実家に赴いた。結果は、残念ながら私の考えた通りだった。弟の部屋からはこれまでにA子さんがストーカーに取られた下着や衣類の他に、A子さんも無くなっていることに気づいていなかった昔の服や、果ては箪笥の奥にしまっていたはずの学生時代の制服や学芸品が山のように隠されていたのだ。

その後両親とともに弟を問い詰め、弟が一人の女性としてA子さんを愛していたこと、A子さんが実家を出て会えなくなった寂しさから犯行に及んだこと、叶うはずのない恋心に弟自身追いつめられていたことを、A子さんから聞いた。

A子さんが弟の部屋を調べた時点で、事件は私の手を離れていた。警察沙汰にはせず、後はA子さんの家族内での話し合いで解決することとなったのだ。

現在A子さんは自宅アパートに戻り、弟は両親の監視の元実家で生活している。表面上は元通りの生活だ。ただし弟はA子さんの自宅や本人に近づくことを禁止されている。もしA子さんに無断で近づいた場合、今度こそ警察沙汰にするという約束付きだ。これは「そうしないと自分を抑えられないから」と、弟本人が希望したものであった。

「安心して生活できるようにはなりました。でも、大事な弟がいなくなってしまったみたいで、それだけが悲しいです」

A子さんは解決した今もなお、心を痛め続けている。ストーカーは見ず知らずの他人ではなく身近な人間が犯人であることが多い。とはいえ今回はあまりにも身近過ぎた。

(※これは実際の案件を元に、本人の了承を得た上で脚色を加えてあります)

 

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総合探偵社 ガルエージェンシー京都中央(0120-783-799)

代表は元京都府警捜査官。30数年もの間、暴力団捜査・知能犯捜査の特捜最前線で数々の難事件を指揮、解決に導く。刑事事件や民事事件の証拠収集にも対応可能な支社で、顧問弁護士とのプロジェクトチームによる徹底したサポートも行っている。

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