実録 暴力団抗争事件の裏側 ~事件は科学で解明できても、強運の裏付けはできないのか~

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私は、京都府警の捜査官であったが、1990年代、暴力団の抗争が多発していた頃、府警本部捜査第四課、現在の組織犯罪対策課に所属していた。

家宅捜索 山口組

その頃、私も捜査官として携わった一連の抗争事件の中で強運の持主に遭遇し、キツネに抓まれたような出来事があった。殺人に匹敵するような事件であったが、ここでは敢えて「出来事」という。先に読み進めていただければ、その理由はご理解いただける。

 

ある暴力団組長Aが用事を済ませ、駐車していた自家用のバイクに跨り発進しようとした瞬間である。後方から、Aが狙撃された。ヒットマンがAの命を狙いにやってきたのである。Aの背中に数発の銃弾が命中した。しかし、Aはそのままバイクを発進させた。更に発砲は続き、彼はパニックの中、前傾姿勢となり必死にハンドルを握った。ヒットマンが放った最後の1発が、Aの首元から装着していたフルフェイスヘルメットの中へ入った。この時点で、前傾姿勢が仇となったかたちになる。銃弾はAの頸部か頭部をぶち抜いたに違いない……

が、Aは一番近くの病院まで自力でバイクを運転し、病院の前で倒れ込んだ。直ぐに病院に運び込まれたAに緊急手術が施され、彼は一命を取り留めた。

と、ここまでは、ドラマでもよくあるストーリーである。

Aの頸部と頭部には銃痕らしきものが見当たらぬ。ただ、彼の頭皮にネズミが這ったような火傷が見られた。ここからは科学捜査の分野であり、私の専門外であるため、詳細までは説明できない。ただ、その当時の捜査結果は次のとおりであった。

 

Aは普段からカツラを使用しており、事件発生時も装着中であった。そのカツラに使用された科学繊維は非常に強いもので、銃弾から彼の頭部を守り、言わばカツラが防弾チョッキのような役目をしたわけである。銃弾は、カツラとフルフェイスヘルメットの隙間を走った後に、失速したものと思われる。銃弾が走った痕が、ネズミが這ったような火傷の原因とされた。

彼は、カツラのおかげで九死に一生を得たのである。事件発生時、装着していたカツラは焦げ、使い物にならなくなったが、私が捜査のためAの病室を訪れた時には、彼の頭にきっちり替えのカツラが装着されていた。

その後、抗争事件は終息へと向かい、警察の暴力団に対する取締りは一層強化された。警察は次々と暴力団を解散させ、暴力団構成員の数も減少の一途を辿り、日本社会全体に暴力団排除の気運が高まった。しかし、その裏で、暴力団組織の資金獲得活動は、社会経済情勢の変化に対応して一層多様化、巧妙化しつつある。また、私が個人的に懸念しているのが、拳銃の押収丁数と抗争事件に使われた拳銃の数が明らかに合わないことだ。未だ、多くの拳銃が隠されているに違いない。事実、拳銃が用いられた事件が痕を絶たない。また、未解決事件も多く、京都では記憶に新しい王将社長射殺事件も未だ解決に至っていない。ただ、拳銃が一般の方々の手に渡る可能性は非常に低い。暴力団関係者が未だ持っていると断言して良い。暴力団構成員だけではなく、準構成員を含む関係者という点が、警察の捜査を更に難しくしている。私が現職だった頃より潜在化が進み、事件解決には、更なる警察の努力が必要となる。こればかりは、民間人による解決は難しい。日本警察に期待する他ない。

警察 機動隊 

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総合探偵社 ガルエージェンシー京都中央(0120-783-799)

代表は元京都府警捜査官。30数年もの間、暴力団捜査・知能犯捜査の特捜最前線で数々の難事件を指揮、解決に導く。刑事事件や民事事件の証拠収集にも対応可能な支社で、顧問弁護士とのプロジェクトチームによる徹底したサポートも行っている。

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コメント

  1. 阿納 丹益 より:

    「ネズミ」が這ったような火傷?
    「ミミズ」の間違いじゃないかなぁ?

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